2011年11月25日
苦しみというものを
好んで味わいたい人なんてのは
よっぽどの人でない限りいないのではないだろうか。
今回の本

幸福の商社、不幸のデパート ~僕が3億円の借金地獄で見た景色~
水野 俊哉
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本書、水野俊哉氏ご本人から献本頂きました。ありがとうございます。
水野氏といえば
成功本50冊「勝ち抜け」案内
徹底網羅!お金儲けのトリセツ
などの著書、または過去にブロガーマトリックスなんていうもので楽しませてくれたりと
いわゆる分析型を得意とするのかなと思っていたわけだが、
今回の本は打って変わってのエッセイ、自伝!
しかも内容が思っていた以上にハードボイルドだったり。
さてさて、どんなことが書かれているのでしょうか。
好んで味わいたい人なんてのは
よっぽどの人でない限りいないのではないだろうか。
今回の本

幸福の商社、不幸のデパート ~僕が3億円の借金地獄で見た景色~
水野 俊哉
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本書、水野俊哉氏ご本人から献本頂きました。ありがとうございます。
水野氏といえば
成功本50冊「勝ち抜け」案内
徹底網羅!お金儲けのトリセツ
などの著書、または過去にブロガーマトリックスなんていうもので楽しませてくれたりと
いわゆる分析型を得意とするのかなと思っていたわけだが、
今回の本は打って変わってのエッセイ、自伝!
しかも内容が思っていた以上にハードボイルドだったり。
さてさて、どんなことが書かれているのでしょうか。
【目次】
【書感】
本読みであって書評本を出しているくらいの著者である水野俊哉さんが
自身の体験してきた経験をビジネスエッセイとも言える形で表現したのが本書。
既存の媒体を分析して紐解くというスタンスがいままで取られていたので
正直何をやってきた著者なのだろう?
と著者の経験という部分があまり表面だっていなかっただけに、今回はそれを全面的にストレートにぶつけてきたという感じで読み物として興味深くスラスラ読めてしまった。
しかも華々しい部分というよりはドロドロした「痛み」の部分をきちんと表現し強調して書くという自虐的要素が垣間見れるのも特徴的である。
ちょっと嫌な言い方になるかもしれないが、自分自身でない「痛み」、つまり自身以外の痛みというのは、なんともいえない情動を刺激する。特に読み物の場合。
それでもって、興奮を覚えたりもするわけであり、そういった要素が本書の場合はうまく引き出され、物語に読み手は吸い込まれるのではないかなと感じる。
(まぁこれでも痛みの部分はオブラートには包まれているのだと思うのだけれども。)
本書の目次は5章立てで構成されているが、
個人的に構成は大まかに捉えると次のような構成になっていると思う
・ITバブルの中、経営者として
・借金地獄
・借金の果てに
なのでその3点で今回は読みといて進んで行こうと思う。
ベンチャーという激しい競争の中社員は朝から晩、下手したら泊まりで仕事に没頭したり、サービスのクオリティを高めるために糸目をつけない資金繰りをしたり、下請けを脱却するために華々しいビジネスを実施したり、事業は波に乗り、スタッフは溢れ、片っ端から金を借りと、取引先だけではなく、金融機関も「魅力的な会社だ」と言い寄ってきたり「敗北」なんて言葉は考えずひたすら突っ切った場面が書かれている。
ただし、背後には社長や美女だけを集めたVIPのパーティーで色欲蠢き嫉妬溢れる醜い世界があったり、インキュベーション(起業支援)という名の下、裏で金を操作している連中だったりと、光の反対に闇があるように、そういう怪しげなパワーの存在も目の辺りにする機会が増えていったのである。
そして、栄光への挑戦はある日、突然終わりを告げる。
それは、内部からのクーデターという形で発生してしまう。会社の株の大部分を水野氏が保有していたため、クーデターは無意味だった。
しかし、クーデターを起こしたのが営業、財務を根幹に実施しているメンツであり、この裏切りによって内部の情況はガタガタになり、資金繰りが難しくなり、新規事業をすすめるなんてことは実質不可、栄光の時代は一転して借金という地獄の時代が始まってしまう。
そんな中、街を放浪していたある時、お金に換算できないものとして以下のことに気づいたそうだ。
大切な人たちとの楽しい時間。
ゆっくりと休息を取るための時間。
趣味に没頭する時間。
お金のためではなく、誰かに貢献するための時間。
自己成長のための時間。当たり前と思う人もいるかもしれないけれど、誰しも日々に忙殺されてしまうと忘れてしまうようなことではないだろうか。
と同時にクリエイティブチームだけでなく、金や権力に群がっていたすべての人々が波打ち際の引き潮のように消えていき、自身も会社を追放となる。
それからは取り立て屋との終わりなき戦いがはじまる。
芸能人のようにマスクとサングラスをし、以前のテリトリには近寄らず、家にいるときは1日中カーテンを閉めきり、暗くなっても電気をつけずに過ごす。
取り立てにもルールがあるので昼間は繁華街などで時間を潰して深夜にこっそり自宅に戻ればだいたい取り立てに合わずにすむわけだが、時には待ち伏せされて土下座させられたこともあったそうだ。
知識も経験も豊富な金融機関と、はじめて大きな借金を負った借り手とでは大人と子供がポーカーをするようなもので格好のカモになってしまうわけだ。
そんな恐怖に怯える中、とある事業再生のホームページを見つけ、それが地獄から抜けだす救いにつながっていくのである。
一つは人との出会い、事業再生コンサルタントの川原愼一先生との出会いである。
3億円にもなっていた負債、水野氏にとっては人生の一大事なわけだったのだが、川原先生曰く「たったの3億、あなたの負債なんて自分で思っているほどたいしたものじゃない」であった。
この川原先生自身も実はかつて20億の負債を抱えた人物であったのだ。
その3億の負債との戦いの戦略としては
借金を抱えてしまった場合の対処として、一番やってはいけないのが闇金のような更に利息の高い金を借りて返すということ。
借りた金を返さないというのは決してよいことではない。しかし、返したくても返せない情況に陥った際に、経営責任以上の負い目があるわけではない。
今借金で苦しんでいる人がいたら、この言葉は忘れてはいけない。
ただし、負債から解放される過程は決して楽なものではない。矢のように金融機関からは催促の電話がかかってくる。サービサーに変わるともうそれはヒドイものになったそうで、電話への恐怖感も募ったそうだ。
ただ、ここでも川原先生、電話番号を変え、家を引っ越してしまえばいいじゃないとアドバイスし、水野氏はまさに夜逃げのように引越したのだ。
それからしばらく経った時、初めて金融機関への銀行周りが始まる。
この時の出来事は想像も絶するものであったため、水野氏にはほとんど記憶がなく、川原先生がいなければ乗りきれなかったとも書いてある。
それからは更に、サービサーと粘り強く交渉していき債権放棄の方向でほとんどの交渉が進み4年ほどの時間を費やし負債から完全に解放されたそうだ。
当然、収入になっているものは差し押さえられ、本当の無一文になったのは言うまでもないが。
ここでゼロになった水野氏へ、現れるもう一つの救い手は、水野氏の作家としてのデビューにつながる「ビジネス書」「成功本」であった。
すべてを失った時、膨大な時間だけが残り、特にやれることもなかったため、その時間を使って貪るようにビジネス書、成功本を読みだしたそうだ。
ビジネスに明け暮れていたときであれば「思考は現実化する」のような本などもアホらしく思っていた人間が、ビジネス書を読んでいくうちに自身がどれだけ経営のことを理解していなかったとか自身の無謀さを気づくことができたそうだ。
そして、その多くの成功本のパターンを分析し「お金」「時間」「健康」「人間関係」というカテゴリで徐々に生活習慣に取り入れていったのである。
それらの成功法則、特に「目標を紙に書く」ということに関しては「作家」という夢をチャンスを結びつけ、今の著者水野俊哉氏が誕生したきっかけにもなっているという。
まさに人生はいつからでもやり直せる。気づいたとき、気づけたときがその人の変わるチャンスなのである。を体現した瞬間だったのである。
僕自身もSFなど好きだし、物語には起きたかもしれない「if…」という要素が想像できたほうが面白いだろうとは思う。
それに僕自身ももう(まだ)28年という時を生きているわけで、「if…」を想ったことがないかというと嘘になる。
しかし、現実はやっぱり非情で起きたかもしれないは「起き得ない」し、あの頃この選択をしていればという後悔も結局時間という波の中に収束していく。
もしかすると、パラレルワールド的に「たまたまいまいる世界」を選択しているのかもしれない。
それでも、今この緩やかに残酷に過ぎていく時間は非情であり、やっぱりそれが現実と直視しなくてはいけないのではないだろうか。
本書にも死ぬまでの時間をどう生きるかということが書いてあったし、このブログでも何度も言っていることだが(本当に自戒の意味を込めて)、人生は一回きり、そしてこの一刻一刻は確実に誰にも訪れるであろう「死」に向かうしか無いのである。
これを悲観的にとってもそれは人生だし、楽観的にとることもそれは人生でそれを決めているのは結局この人生を歩んでいる自分自身なわけである。
じゃああなた自身はどう生きるか?
自身で生きるのを「諦める」という判断をしない限りはどんなに挫けても、失敗してもチャンスというものは必ずあるのだなと思う。
それは著者が本書の中で自分の生き様を表現するなかで見せてくれたのではないだろうか。やっぱり月500万の返済が必要なんて言ったらプレッシャーに押しつぶされてしまうかもしれない。
でもそれすらもまだまだ浅いケースですよなんていう救いの手が伸びる可能性だってあるかもしれないし、防ぐことだってできるわけである。
「お金」「時間」「健康」「人間関係」今現在を生きるのにはどれも必要なことだ。
けれども捕らわれすぎて自分を疎かにしてもいけないわけだし、時間や健康なんてものは帰ってこないわけである。少しでも実りある自分の人生という物語にするため「知」という武装をしつつ「死」という先は長いか、短いか不明だし、道中は決して楽しいことばかりではないかもしれないけれども、確実に選択されてしまうグランドフィナーレは笑って迎えたいものではある。

幸福の商社、不幸のデパート ~僕が3億円の借金地獄で見た景色~
水野 俊哉
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【後記】
本書の中で水野氏がどうやって多くの金融機関からお金を借りたかなんてテクが書かれていた。
簡単に言うと3点
・スーツ力
勝負スーツに白いワイシャツ、お札を思わせる茶色に金色の刺繍が入ったネクタイの組合せを着る
・ストーリーテリング
「この事業には将来性を感じる」と思わせるため、この事業に必要な資金を貸してくれれば必ず儲かる、きちんと返済できるというメッセージを一貫して送り続ける。
逆に「いま、経営が苦しいから助けてほしい」などと情に訴えかけても、「この事業に将来性はなさそうだな」と判断されてしまう可能性のほうがあるそうだ。
・数字の裏付け
1億円必要な場合でも、一行からの融資の目安を2ヶ月、もしくは年間の利益と同額にするなど数字的な裏付けを大事にし、月商1,000万円なら2,000万円の融資を、経常利益が1000万円なら同額の借入を申し入れるなど、
適正と思わせる金額分の申し込みしかしない
こんなビジネス書的要素も本書の中に組み込まれているわけだから流石としか言いようがないね。
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■Chapter 1 欲望とカネの世界
■Chapter 2 こうしてお金の流れは止まる
■Chapter 3 脱出不能の借金の穴
■Chapter 4 地獄で知った「お金のからくり」
■Chapter 5 幸福の商社、不幸のデパート
【書感】
本読みであって書評本を出しているくらいの著者である水野俊哉さんが
自身の体験してきた経験をビジネスエッセイとも言える形で表現したのが本書。
既存の媒体を分析して紐解くというスタンスがいままで取られていたので
正直何をやってきた著者なのだろう?
と著者の経験という部分があまり表面だっていなかっただけに、今回はそれを全面的にストレートにぶつけてきたという感じで読み物として興味深くスラスラ読めてしまった。
しかも華々しい部分というよりはドロドロした「痛み」の部分をきちんと表現し強調して書くという自虐的要素が垣間見れるのも特徴的である。
ちょっと嫌な言い方になるかもしれないが、自分自身でない「痛み」、つまり自身以外の痛みというのは、なんともいえない情動を刺激する。特に読み物の場合。
それでもって、興奮を覚えたりもするわけであり、そういった要素が本書の場合はうまく引き出され、物語に読み手は吸い込まれるのではないかなと感じる。
(まぁこれでも痛みの部分はオブラートには包まれているのだと思うのだけれども。)
本書の目次は5章立てで構成されているが、
個人的に構成は大まかに捉えると次のような構成になっていると思う
・ITバブルの中、経営者として
・借金地獄
・借金の果てに
なのでその3点で今回は読みといて進んで行こうと思う。
■「金で買えないものはない」
1994年に社会に出て猛烈に働き、ITバブルであったかつて、この本の著者である前に、当時は社長であった水野氏はその渦中の中にいたベンチャーという激しい競争の中社員は朝から晩、下手したら泊まりで仕事に没頭したり、サービスのクオリティを高めるために糸目をつけない資金繰りをしたり、下請けを脱却するために華々しいビジネスを実施したり、事業は波に乗り、スタッフは溢れ、片っ端から金を借りと、取引先だけではなく、金融機関も「魅力的な会社だ」と言い寄ってきたり「敗北」なんて言葉は考えずひたすら突っ切った場面が書かれている。
ただし、背後には社長や美女だけを集めたVIPのパーティーで色欲蠢き嫉妬溢れる醜い世界があったり、インキュベーション(起業支援)という名の下、裏で金を操作している連中だったりと、光の反対に闇があるように、そういう怪しげなパワーの存在も目の辺りにする機会が増えていったのである。
そして、栄光への挑戦はある日、突然終わりを告げる。
それは、内部からのクーデターという形で発生してしまう。会社の株の大部分を水野氏が保有していたため、クーデターは無意味だった。
しかし、クーデターを起こしたのが営業、財務を根幹に実施しているメンツであり、この裏切りによって内部の情況はガタガタになり、資金繰りが難しくなり、新規事業をすすめるなんてことは実質不可、栄光の時代は一転して借金という地獄の時代が始まってしまう。
■借金地獄へ…そして気づいたこと
借金の苦しみは重度の薬物中毒患者のそれと変わらないと水野氏は書いている。「資金繰りがつかなかったらどうしよう」という恐怖感、「いや、大丈夫だ。これまでも数々の修羅場を乗り切ってきた」という気持ちがごちゃまぜになって、堂々巡りを繰り返したそうだ。そんな中、街を放浪していたある時、お金に換算できないものとして以下のことに気づいたそうだ。
大切な人たちとの楽しい時間。
ゆっくりと休息を取るための時間。
趣味に没頭する時間。
お金のためではなく、誰かに貢献するための時間。
自己成長のための時間。当たり前と思う人もいるかもしれないけれど、誰しも日々に忙殺されてしまうと忘れてしまうようなことではないだろうか。
人生とは死ぬまでの時間をどう生きるかということである。そのためには、この貴重な一瞬一瞬をどう生きるか考えるための時間が大事なことはいうまでもない。そして、事業が一時ストップになった。
当時の僕は日々の業務に忙殺されて、ビジネスのことしか考えられなくなっていた。
心の自由は、金銭的な価値では計れない。そんな簡単なことに気づくために、僕はこれまでいろいろなものを失ってしまった。
人々が日々の暮らしで営んでいることや、人と愛し合うこと、近い人との心の触れ合い、つながっているという想い、何もせず橋の欄干にそって見上げる下町の夕焼け空。
こうした僕たちの心に幸せをもたらすもろもろのことにそれぞれ金銭的な価値はつけられないけど、だからこそプライスレスであり「金で買えないものはない」などという言葉は大間違いなのだった。
と同時にクリエイティブチームだけでなく、金や権力に群がっていたすべての人々が波打ち際の引き潮のように消えていき、自身も会社を追放となる。
それからは取り立て屋との終わりなき戦いがはじまる。
芸能人のようにマスクとサングラスをし、以前のテリトリには近寄らず、家にいるときは1日中カーテンを閉めきり、暗くなっても電気をつけずに過ごす。
取り立てにもルールがあるので昼間は繁華街などで時間を潰して深夜にこっそり自宅に戻ればだいたい取り立てに合わずにすむわけだが、時には待ち伏せされて土下座させられたこともあったそうだ。
知識も経験も豊富な金融機関と、はじめて大きな借金を負った借り手とでは大人と子供がポーカーをするようなもので格好のカモになってしまうわけだ。
そんな恐怖に怯える中、とある事業再生のホームページを見つけ、それが地獄から抜けだす救いにつながっていくのである。
■借金の果て、救いの手
地獄と思っていた世界からの救いの手は2つあった。一つは人との出会い、事業再生コンサルタントの川原愼一先生との出会いである。
3億円にもなっていた負債、水野氏にとっては人生の一大事なわけだったのだが、川原先生曰く「たったの3億、あなたの負債なんて自分で思っているほどたいしたものじゃない」であった。
この川原先生自身も実はかつて20億の負債を抱えた人物であったのだ。
その3億の負債との戦いの戦略としては
「まずはすべての支払いをストップして、少ししてから各金融機関に利払いだけの返済にしてもらうよう条件変更の交渉をする」というのが基本戦略だった。というものである。で実際にサービサーに売却される金額は10%以下という現実を知るのである。そう、当初に比べるとこの事実だけで10分の1になる。まさに、知っているか知らないかで天と地ほどの差が出るものが人生という点にも気づくわけである。知力という武器を持つか持たないかで大分世界が変わってしまうのだ。
こうしてしばらくすると、ほとんどの金融機関は債権をサービサー(債権回収会社)に譲渡すると考えられるので、そこで減額や債権放棄の最終交渉をする流れだった。
金融機関には自己資本比率の基準がある。また、貸し倒れの可能性のある資金に対しては引当金を積まなければいけない。しかし、通称サービサー法というものがあり、銀行は不良債権をサービサーに売却した際の赤字は損金として無税で処理できる。
これにより金融機関にとっては、リスケしても返済がままならないような債権は、とっとと不良債権処理したほうがメリットがあるのだ。
借金を抱えてしまった場合の対処として、一番やってはいけないのが闇金のような更に利息の高い金を借りて返すということ。
借りた金を返さないというのは決してよいことではない。しかし、返したくても返せない情況に陥った際に、経営責任以上の負い目があるわけではない。
今借金で苦しんでいる人がいたら、この言葉は忘れてはいけない。
借りた金が返せなくなった者は、死んでお詫びをするしかないのだろうか。という言葉は借りたものはきっちり返す、命を投げてでもと思い込んでいる人にとっては救いになるのではないだろうか?自ら死なんて逃げを選ぶよりまだまだやれるチャンスはあるはずなのだから。
決してそんなことはない。なぜなら金より命のほうが大事だからだ。
いくら借金で苦しいからといって、金のことなんかで死ぬことはないのである。
ただし、負債から解放される過程は決して楽なものではない。矢のように金融機関からは催促の電話がかかってくる。サービサーに変わるともうそれはヒドイものになったそうで、電話への恐怖感も募ったそうだ。
ただ、ここでも川原先生、電話番号を変え、家を引っ越してしまえばいいじゃないとアドバイスし、水野氏はまさに夜逃げのように引越したのだ。
それからしばらく経った時、初めて金融機関への銀行周りが始まる。
この時の出来事は想像も絶するものであったため、水野氏にはほとんど記憶がなく、川原先生がいなければ乗りきれなかったとも書いてある。
それからは更に、サービサーと粘り強く交渉していき債権放棄の方向でほとんどの交渉が進み4年ほどの時間を費やし負債から完全に解放されたそうだ。
当然、収入になっているものは差し押さえられ、本当の無一文になったのは言うまでもないが。
ここでゼロになった水野氏へ、現れるもう一つの救い手は、水野氏の作家としてのデビューにつながる「ビジネス書」「成功本」であった。
すべてを失った時、膨大な時間だけが残り、特にやれることもなかったため、その時間を使って貪るようにビジネス書、成功本を読みだしたそうだ。
ビジネスに明け暮れていたときであれば「思考は現実化する」のような本などもアホらしく思っていた人間が、ビジネス書を読んでいくうちに自身がどれだけ経営のことを理解していなかったとか自身の無謀さを気づくことができたそうだ。
そして、その多くの成功本のパターンを分析し「お金」「時間」「健康」「人間関係」というカテゴリで徐々に生活習慣に取り入れていったのである。
それらの成功法則、特に「目標を紙に書く」ということに関しては「作家」という夢をチャンスを結びつけ、今の著者水野俊哉氏が誕生したきっかけにもなっているという。
まさに人生はいつからでもやり直せる。気づいたとき、気づけたときがその人の変わるチャンスなのである。を体現した瞬間だったのである。
●最後に
起こったかもしれない未来という形で、「if…」の結末、パラレルワールドが本書の巻末のほうで綴られる。僕自身もSFなど好きだし、物語には起きたかもしれない「if…」という要素が想像できたほうが面白いだろうとは思う。
それに僕自身ももう(まだ)28年という時を生きているわけで、「if…」を想ったことがないかというと嘘になる。
しかし、現実はやっぱり非情で起きたかもしれないは「起き得ない」し、あの頃この選択をしていればという後悔も結局時間という波の中に収束していく。
もしかすると、パラレルワールド的に「たまたまいまいる世界」を選択しているのかもしれない。
それでも、今この緩やかに残酷に過ぎていく時間は非情であり、やっぱりそれが現実と直視しなくてはいけないのではないだろうか。
本書にも死ぬまでの時間をどう生きるかということが書いてあったし、このブログでも何度も言っていることだが(本当に自戒の意味を込めて)、人生は一回きり、そしてこの一刻一刻は確実に誰にも訪れるであろう「死」に向かうしか無いのである。
これを悲観的にとってもそれは人生だし、楽観的にとることもそれは人生でそれを決めているのは結局この人生を歩んでいる自分自身なわけである。
じゃああなた自身はどう生きるか?
自身で生きるのを「諦める」という判断をしない限りはどんなに挫けても、失敗してもチャンスというものは必ずあるのだなと思う。
それは著者が本書の中で自分の生き様を表現するなかで見せてくれたのではないだろうか。やっぱり月500万の返済が必要なんて言ったらプレッシャーに押しつぶされてしまうかもしれない。
でもそれすらもまだまだ浅いケースですよなんていう救いの手が伸びる可能性だってあるかもしれないし、防ぐことだってできるわけである。
「お金」「時間」「健康」「人間関係」今現在を生きるのにはどれも必要なことだ。
けれども捕らわれすぎて自分を疎かにしてもいけないわけだし、時間や健康なんてものは帰ってこないわけである。少しでも実りある自分の人生という物語にするため「知」という武装をしつつ「死」という先は長いか、短いか不明だし、道中は決して楽しいことばかりではないかもしれないけれども、確実に選択されてしまうグランドフィナーレは笑って迎えたいものではある。

幸福の商社、不幸のデパート ~僕が3億円の借金地獄で見た景色~
水野 俊哉
[詳細はAmazonで⇒

【後記】
本書の中で水野氏がどうやって多くの金融機関からお金を借りたかなんてテクが書かれていた。
簡単に言うと3点
・スーツ力
勝負スーツに白いワイシャツ、お札を思わせる茶色に金色の刺繍が入ったネクタイの組合せを着る
・ストーリーテリング
「この事業には将来性を感じる」と思わせるため、この事業に必要な資金を貸してくれれば必ず儲かる、きちんと返済できるというメッセージを一貫して送り続ける。
逆に「いま、経営が苦しいから助けてほしい」などと情に訴えかけても、「この事業に将来性はなさそうだな」と判断されてしまう可能性のほうがあるそうだ。
・数字の裏付け
1億円必要な場合でも、一行からの融資の目安を2ヶ月、もしくは年間の利益と同額にするなど数字的な裏付けを大事にし、月商1,000万円なら2,000万円の融資を、経常利益が1000万円なら同額の借入を申し入れるなど、
適正と思わせる金額分の申し込みしかしない
こんなビジネス書的要素も本書の中に組み込まれているわけだから流石としか言いようがないね。
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